AIが「できない仕事」に依頼が殺到中
AIの普及で仕事が消えると言われる一方、海外では「AIの成果物を直す人間」への依頼が急増しています。修正依頼が712%増加したというデータの中身と、個人事業主がこの流れを収益に変える具体的な方法を解説します。
【何が起きているのか】
いま海外で、少し皮肉な現象が報じられています。コスト削減のために業務をAIへ置き換えた企業が、AIの成果物の品質問題に直面し、修正のために改めて人間のフリーランスへ依頼している。いわば「AIの後始末」が新しい仕事の市場になっているのです。
米公共ラジオ局KUOW(シアトル)が2025年10月に報じた、仕事仲介サイト大手Fiverr(ファイバー)の集計データが象徴的です。
- WordPress(ワードプレス:ホームページ作成システム)の修正依頼が、2024年10月〜2025年3月の半年間で712%増加
- Shopify(ショッピファイ:ネットショップ作成サービス)の修正依頼が3倍以上に増加
- 一般的なWebサイト保守の依頼も4倍以上に増加
同記事では、AIが生成した欠陥コードの全面的な直しを病院チェーンから請け負う開発会社の事例や、「AIならコードが5分で書けるが、その後の修正に2時間かかる」という現場の声も紹介されています。また米NBCニュースなど複数メディアは、AIが作ったロゴの崩れた文字を描き直すイラストレーターや、AIの文章を読者に届く文章へ書き直す依頼が仕事の半分を占めるようになったライターの事例を報じています(報酬は時給25〜75ドルとの報道もありますが、取材ベースの数字です)。
この流れはコンテンツ制作だけではありません。開発者向けサービスのGitHub(ギットハブ:プログラムの共有・管理サービス)は2026年6月、AIで量産された雑なプルリクエスト(コードの変更提案)を抑制するため、ユーザー当たりの提案数に上限を設定できる新機能を発表しました。プラットフォーム側も「AIで大量に作ること」より「人間が品質を確かめること」を守る方向に動き始めています。
「AIの成果物を直す人間」への依頼が急増している
【個人ビジネスにどう役立つのか】
ポイントは、AIの普及で「成果物を作る」価値が下がった結果、「見極めて、責任を持って仕上げる力」が希少になったことです。これは個人事業主にとって、次のような商機になります。
- ライター・ブロガーの場合
・Before:「記事を1本いくらで執筆」
・After:「AI下書きの事実確認、体験談の追加、トーン調整まで含めた品質保証つき記事制作」として単価を再設計できる
- デザイナーの場合
・Before:「ロゴを新規制作」
・After:「AI生成ロゴの商用品質への仕上げ、入稿データ化」という修正メニューを追加できる
- Web制作者の場合
・Before:「サイトを新規構築」
・After:「AIで作ったサイトの表示崩れ・セキュリティの点検保守」を月額サービスにできる
私自身、自動車部品加工業を15年間営む中で、「最終検品と出荷の判断だけは人が行う」という体制を貫いてきました。親会社が対価を払っていたのは加工そのものだけではありません。「この品質なら安心して任せられる」という価値を認めていたからです。AI時代の個人ビジネスも、本質は同じだと思います。これから選ばれるのは、成果物そのものを売る人ではなく、「この成果なら安心して任せられる」と胸を張って言える人 。私は、その「安心への責任」にこそ、これからの時代に求められる価値があると考えています。
【具体的な始め方・おすすめツール】
1. 自分の業務を「AIに任せる」「AIと共同」「人間が最終判断」の3つに仕分けする(メモアプリや紙とペンで30分あれば十分です)
2. ChatGPTまたはClaudeに自分の経歴を伝え、「人間の保証」を打ち出せるサービス案を壁打ちする
3. 既存メニューに「確認・保証」を明記した商品を1つ追加し、SNSやプロフィールで告知する
● おすすめツール(いずれも無料で始められます)
- ChatGPT(OpenAI):無料〜/有料プランPlusは月約20ドル。サービス案の壁打ちに。公式 https://chatgpt.com
- Claude(Anthropic):無料〜/有料プランProは月約20ドル。長文の点検・文章の品質チェックに。公式 https://claude.ai
- Gemini(Google):無料〜/有料プランGoogle AI Proは月2,900円。Googleドキュメントと組み合わせた文書チェックに。公式 https://gemini.google.com
「人間の保証」を価値に変える3ステップ
【まとめ】
「AIができない仕事」の正体は、成果物の最後の1割に責任を負う仕事でした。AIと競い合う必要はありません。作る工程はAIに任せ、自分は成果を見極め、最後の品質を保証する役割を担う。その立ち位置へ移ることが、AI時代を生き抜くための、最も現実的な戦略だと私は考えています。
【トレンド分析メモ】
📈 業界の方向性:AI導入の第一波(置き換え)が一巡し、品質問題の顕在化とともに「人間による検証・保証」を組み込む第二波へ移行している。GitHubの上限機能のように、プラットフォーム自体が量産型AIコンテンツを制限する動きも並行して進む。
👨💻 今後1〜3ヶ月で準備すべきこと:自分の業務の「AI仕分け」を済ませ、既存サービスに「確認・保証」を明記したメニューを1つ用意しておくこと。AIで作って終わりの競合と差がつき始める時期に先行できる。
💡 注目キーワード:AIスロップ(AIが量産した低品質コンテンツ)/ヒューマン・イン・ザ・ループ(人間を工程に組み込む設計)/品質保証型フリーランス
【情報ソース】
- KUOW「The human coders hired to mop up AI slop」 https://www.kuow.org/stories/the-human-coders-hired-to-mop-up-ai-slop (公開日:2025年10月1日)
- NBC News「Humans are being hired to make AI slop look less sloppy」 https://www.nbcnews.com/tech/tech-news/humans-hired-to-fix-ai-slop-rcna225969 (ページ取得不可のため、内容は下記を含む独立二次ソースで裏取り)
- Freelance Informer「AI Fups: Freelancers find new income stream fixing machine-made mistakes」 https://www.freelanceinformer.com/news/ai-fups-freelancers-find-new-income-stream-fixing-machine-made-mistakes-but-how-long-will-it-last/
- ITmedia NEWS「GitHub、AIによる雑なプルリクエストを抑制へ」 https://www.itmedia.co.jp/news/spv/2606/30/news102.html (公開日:2026年6月30日)
- Publickey「GitHub、AIによる雑なプルリクエストを抑制へ。ユーザー当たりのプルリクエスト数の上限を設定できる新機能導入」 https://www.publickey1.jp/blog/26/githubai_1.html
【ファクトチェック報告】
- 確認済み事実:Fiverrの修正依頼増加データ(WordPress712%増・2024年10月〜2025年3月、Shopify3倍以上、保守4倍以上)はKUOW記事本文を直接取得して確認。GitHubのプルリクエスト上限機能はITmedia・Publickeyの2ソースで一致を確認。ChatGPT/Claude/Geminiの無料枠と有料プラン価格(月20ドル)は複数の料金比較記事で確認。
- 未確認情報:NBCニュース本体はページ取得不可(403)のため、イラストレーター・ライターの事例は同記事を引用した独立二次ソース複数の一致内容のみ記載。時給25〜75ドルは取材ベースの報道値であり公式統計ではない旨を本文に明記。きっかけとなったNewsPicks記事(6/25)は有料記事のため本文未確認であり、記事内では引用していない。
- 注意事項:Fiverrのデータは2025年時点の集計であり、本記事では期間を明示して記載。「AI修正需要」が長期的に続くかは業界内でも見方が分かれるため、断定を避け「第二波への移行」という表現にとどめました。