AIの嘘、原因は「採点方法」でした。
AIの回答に、実在しない記事や数字が混ざっていて困った経験はありませんか。AIがもっともらしい嘘をつく原因の一つを、OpenAIが研究報告で説明しています。背景にあるのは、AIの学習や評価で使われる「採点方法」です。今回は、その仕組みと今日からできる対策を解説します。
【何が起きているのか】
2026年7月30日、Forbes JAPANが「AIの嘘を封じ込めるプロンプト」と題した記事を公開し、話題になっています。背景にあるのは、OpenAIが2025年9月5日に公開した研究報告です(ジョージア工科大学の研究者との共著)。
この報告は、ハルシネーション(AIが事実でない内容を、本当のことのように自信を持って答えてしまう現象)が続く原因を分析したものです。結論は、AIの学習や評価で使われる採点方法が、「わからない」と答えるより「当て推量」に報酬を与える仕組みになっていることが、ハルシネーションを促す一因になっているというものでした。
仕組みは学校のテストに似ています。正解率だけで採点すると、「分かりません」と答えれば0点、推測すれば正解の可能性が残ります。誰かの誕生日なら、適当な日付でも365分の1で当たります。このような採点を大量の問題で繰り返すと、正直に「わからない」と言うAIより、堂々と推測するAIの方が高評価になってしまうのです。
OpenAIの比較データもあります。SimpleQAという評価では、自信がないとき52%の質問で回答を控えるモデルのエラー率は26%でした。一方、回答を控える割合が1%しかない古いモデルは、正解率こそわずかに上回るものの、エラー率は75%に達しています。
重要なのは、OpenAIが「ハルシネーションは防ぎようがない、というのは誤解」と明言している点です。AIは不確かなとき、回答を控えることができます。Forbes JAPANの記事で紹介されたプロンプト術も、この性質を使い、検証のルールを質問の後ではなく会話の最初に置く方法です。
AIの嘘は能力不足ではなく「採点方法」が原因。
【個人ビジネスにおける解決方法】
「AIの回答を確認する時間がない」という悩みは、確認の作業を「後ろ」ではなく「前」に持ってくることで軽くなります。
● ライター:記事の下調べをAIに頼むと、実在しない参考記事が混ざることがある。
- Before:納品前に出典を1つずつ検索して確かめ、不確かな情報を削って書き直す。
- After:会話の最初に「確認できない情報は推測で作らない」と指示しておけば、不確かな情報を勝手に補わず、確認できた情報だけで記事を作成できます。
● コンサル・士業:提案書や説明資料の数字に、根拠不明の統計が入り込むリスクがある。
- Before:AIが出した市場規模や統計を、そのまま資料に貼ってしまい、出典を聞かれて慌てる。
- After:「数値には情報源を添える」と最初に指示し、情報源のない数字は資料に使わないと決める。お客様への説明にも自信が持てる。
● 物販・小さなお店:商品説明やお知らせの文章をAIに任せる場面が増えている。
- Before:AIが書いた「お客様の声」風の文例や効果の数字を、気づかずそのまま掲載しそうになる。
- After:「事例や数値を推測で作らない」と先に約束させ、実際のお客様の声だけを材料として渡す。掲載前の見直しは事実確認だけに絞れる。
私は大手メーカーでの営業時代、百貨店やスーパーへの提案にPOSデータ(レジの販売実績データ)を使っていましたが、数字は必ず出所を確かめてから提案に載せていました。根拠のない数字は取引先に通用しなかったからです。AIの回答も同じで、出所とセットで受け取る習慣にすると、安心して仕事に使えます。
【具体的な始め方・おすすめツール】
検証ルールはChatGPT・Claude・Geminiの3ツール共通で使えます。いずれも無料プランから始められます。
✅ ステップ1:会話の最初に検証ルールを置く。
① 実在が確認できない研究・記事・URL・事例・数値を推測で作らない
② 確認できない情報は『確認できません』と書く
③ 数値には情報源を添える
という3点を、依頼文の前に貼り付けます。
✅ ステップ2:よく使うツールに登録して手間をなくす。
ChatGPT(https://chatgpt.com)はカスタム指示、Claude(https://claude.ai)はプロジェクトの指示欄、Gemini(https://gemini.google.com)はGem(自分専用にカスタマイズしたGemini)に検証ルールを登録すれば、毎回貼り付ける必要がなくなります。
✅ ステップ3:大事な出典は最低1つ、必ず自分の目で確認する。
お客様に出す情報は、AIが挙げた出典のうち判断に関わるものを最低1つ、自分でリンクを開いて実在を確かめます。最終確認だけは人の仕事として残します。
対策は確認の前倒し。会話の最初に検証ルールを置き、登録で手間をなくし、最後は自分の目で確かめる。
【まとめ】
AIの嘘は、推測した方が得をする採点方法が、ハルシネーションを促す一因になっているとOpenAIは説明しています。裏を返せば、使う側が「わからないと言っていい」という条件を先に渡せば、回答の正直さは変わります。まずは次の会話の最初に、検証ルールを置くことから始めてみてください。
【トレンド分析メモ】
📈 業界の方向性:AIの評価基準そのものを見直す動きが始まっています。OpenAIは、自信を持った誤答を不確実性の表明よりも重く扱い、不確かさを適切に示した回答にも部分点を与える採点への変更を提案しており、今後のAIは「正直さ」も性能として競う方向に進みつつあります。
👨💻 今後1〜3ヶ月で準備すべきこと:自分がよく使うAIツールに検証ルールを登録し、AIの回答を「出所とセット」で受け取る運用を習慣にしておくことをおすすめします。AIに任せる仕事が増えるほど、確認の型を先に持っている人との差が広がります。
💡 注目キーワード:ハルシネーション(AIがもっともらしい嘘を答える現象)/検証プロンプト(会話の最初に置く確認ルール)/カスタム指示(ChatGPTに前提を記憶させる機能)/Gem(自分専用にカスタマイズしたGemini)
【情報ソース】
- OpenAI公式「言語モデルでハルシネーションがおきる理由」 https://openai.com/index/why-language-models-hallucinate/ (2025年9月5日公開)
- Forbes JAPAN「AIの嘘を封じ込める最強プロンプト、『わからない』と言えない人工知能の弱点」 https://forbesjapan.com/articles/detail/101752 (2026年7月30日公開)
【ファクトチェック報告】
- 確認済み事実:OpenAI研究報告の内容(原因は評価方法・SimpleQAの数値・「防げる」の公式見解)は、OpenAI公式ページの日本語版全文をブラウザで直接確認しました。Forbes JAPAN記事の内容(プロンプトを会話の冒頭に置く方法・捏造禁止などの要素)は記事本文1〜3ページを確認しました。3ツールの無料プランの存在は各公式サイトの周知の提供状況です。
- 未確認情報:Forbes記事は当該研究を「Nature掲載」と記載していますが、OpenAI公式ページでは確認できなかったため、本記事では掲載誌に言及していません。プロンプトによる改善効果の具体的な数値は公表されていないため記載していません。
- 注意事項:記事中のプロンプト例はForbes記事で紹介された方法の要素をふまえた汎用形で、特定の文言の逐語引用ではありません。SimpleQAの数値は特定モデル同士の比較であり、すべてのAIに当てはまる数値ではありません。